5月の終わりに、吉祥寺の喜扇亭で、お世話になっている皆さまと美味しいお肉と楽しい語らいの時間を過ごしました。
喜扇亭では、弊社が鞣した革を天童木工様で椅子に仕立てていただいたものをお使いいただいています。
このご縁は、隈研吾氏が石垣市役所を設計される際、議場の椅子に石垣牛の皮を使うという試みから始まったもので、今回の会食もこのプロジェクトに関わった皆さまとのものです。
その際、人形町今半の社長高岡様ともお話しする機会を得、革を鞣すという仕事を通じて異なる業界の方々とも繋がって、「地産地消」という思いがかなえられるということを実感しました。
人形町今半では、「究極の黒毛和牛を探し当てる」ため港区芝浦にある食肉市場(東京都中央卸売市場)に仕入れ担当者が直接出向き目利きされているそうです。そのような経緯から高岡氏は、お肉を扱うものとして何ができるかを模索されておられました。
その結果、芝浦市場で扱う牛の皮で椅子を作るというプロジェクトが生まれ、今回も天童木工様をはじめとして石垣市役所にかかわった皆さまの力で実現することができました。
お肉の選定基準の関係で、「地産地消」とまではいきませんでしたが、仕入れ先の芝浦市場で生まれる皮を使うという社長の思いが実現できたこと、輸入商品が主流の中、「メイドインジャパン」で頑張りたいという私の思いもかなえられたこと、など、ありがたい仕事であったと感謝しています。
喜扇亭の店内は、天井には和紙を、柱にはベネチアンガラスをしつらえるなど、意匠を凝らしたものとなっているのですが、高岡氏は、最後にどのようなデザイン、色の椅子を入れるか,悩まれたそうです。鉄板焼きのカウンターを引き立てて、落ち着きとくつろぎをお客様に提供できることから「赤茶色」に革の仕様がきまり、天童木工様によって、写真の椅子となりました。
私も、座ってみて、とても心地よく、温かみのあるものだと感じました。
「先ほどお召し上がりになった牛の皮からこの椅子は生まれました」と帰り際のお客様にお伝えすると、お客様が驚いたり、感動したりして、もう一度椅子に手を触れてくださるそうです。
いただいた命を最後まで大切にしたい、という社長の思いが私たちを結び付けてくれたことにご縁を感じずにおれません。